自家消費型太陽光発電とは?導入する際の注意点
自家消費型太陽光発電は、発電した電力を売電せずに自宅や企業内で使用する方法です。2020年のFIT制度改定により、50kW未満の設備では自家消費が前提となり、全量売電が禁止されました。この制度改定により、エネルギー自給自足の動きが加速しています。
自家消費型はCO2削減、電気代の節約、災害時の非常用電力確保に有効ですが、設置スペースの確保や初期費用、メンテナンス費用、天候による発電量の変動が課題です。
目次
自家消費型太陽光発電とは?
自家消費型太陽光発電とは、ソーラーパネルを敷地内に設置し、発電した電力を自宅や会社内で直接使用する方法です。個人宅や企業の屋根や空きスペースを利用して太陽光発電を行い、発電した電力を売電せずに自家消費することで、電力コストの削減やエネルギーの自給自足を実現します。
2020年に固定価格買取制度(FIT制度)が見直され、設置容量が50kW未満の発電設備は自家消費が前提とされ、全量売電が不可能となりました。また、FIT認定を受けるためには、発電量の30%以上を自家消費する設計が求められています。
この制度改定により、自家消費型太陽光発電の需要が増加し、エネルギーの自給自足を目指す動きが強まっています。
◇自家消費型太陽光発電が注目されている理由
FIT制度が自家消費を促進する内容に改定されたことで、自家消費型太陽光発電への関心が高まっています。この発電方式は、企業が抱えるエネルギーに関する3つの課題を同時に解決できるため、導入が進んでいます。
その課題とは、CO2削減への対応、電気料金の高騰、非常用電力の確保です。自家消費型太陽光発電は、これらの課題を解決することで、環境負荷の軽減、コストの削減、安全性の向上に貢献し、多くの企業が注目しています。
自家消費型太陽光発電のメリット
自家消費型太陽光発電は、CO2排出の削減や電気代の上昇抑制に加え、災害時の非常用電力としても有効な手段です。これにより、環境への負荷を減らし、災害時の電力供給の安定性を高めるなど、多くのメリットが注目されています。
◇二酸化炭素の削減
化石燃料による火力発電は、1kWhあたり約690gのCO2を排出しますが、太陽光発電では1kWhあたり17~48gに抑えられ、大幅な削減が可能です。
2020年の「カーボンニュートラル宣言」では、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることが目指されており、企業にもCO2削減が求められています。そのため、国全体で太陽光発電の導入が積極的に推進されています。
◇電気代の削減
自家消費型太陽光発電を導入すれば、高額な電力を購入せずに済み、余った電力を売電することで収入も期待できます。2021年9月以降、多くの電力会社で電気代が上昇しています。
これは、ウクライナ情勢の影響で化石燃料の価格が世界的に高騰したことが原因です。多くの電力会社が現行制度の上限価格に達しており、上限撤廃の動きが強まっているため、今後も電気代の高騰が予想されています。
◇災害時も使用できる
太陽光発電は、天候や時間帯による制約はあるものの、停電時に電力を確保することが可能です。2011年の東日本大震災以降、地震や台風、大雨による災害が増え、災害時の分散型電力の重要性が高まっています。
特に2022年3月には、地震による火力発電所の被害と気温の急低下が重なり、初めて「電力需給逼迫警報」が発令されました。このような状況から、災害や停電時に備える非常用電力の必要性がますます注目されています。
自家消費型太陽光発電を導入する際の注意点
自家消費型太陽光発電の導入には、いくつかの注意点があります。初期費用やメンテナンス費用が発生し、設置スペースが限られる場合もあります。また、発電量は天候や時間帯に左右されるため、安定した電力供給を確保するための対策が必要です。
◇設置スペースが必要
太陽光パネルを設置するには、屋根や敷地内に十分なスペースが必要で、特に屋根の形状、面積、方角が適していることが重要です。日本では、南向きで傾斜角30°に設置するのが最も効率的です。
また、発電した電力を使用可能にするための「パワーコンディショナー」や、安定した電力供給を支える蓄電池など、関連機器の設置スペースも確保する必要があります。
◇初期費用がかかる
太陽光パネルやパワーコンディショナーなどの設備を購入する費用やそれらの取り付け、配線工事にかかる費用が必要です。初期費用は設備の性能や設置する面積によって異なり、広い面積を設置するほど費用が高くなります。
◇メンテナンス費用がかかる
10年以上にわたり使用されるため、定期的なメンテナンスが必要です。安全に運用するためには、ランニングコストとして定期点検や清掃、修理、部品交換の費用がかかります。
特に、太陽光パネルは汚れや異常気象による破損のリスクがあるため、定期的な点検が重要です。メンテナンスを怠ると発電効率が低下し、故障につながる可能性があるので注意しましょう。
◇天候に発電量が左右される
太陽光発電は天候や時間帯の影響を受けやすく、雨や曇りの日は晴れの日に比べて発電量が減り、夜間は発電できません。特に6~7月の梅雨の時期は全国的に発電量が低下しやすいです。
また、日照時間は季節や地域によって異なるため、発電量の見積もりには注意が必要です。自家消費型太陽光発電を導入する際は、発電できない期間についても考えておきましょう。
自家消費型太陽光発電を導入する際のチェックポイント
画像出典:フォトAC
自家消費型太陽光発電を導入する際は、設置スペースや電力の使用状況を確認することが重要です。さらに、補助金制度の活用やスケジュールの調整も考慮しましょう。これらを事前に確認することで、効果的な導入と運用ができます。
◇建物
建物の築年数や耐荷重などの条件を満たす必要があります。調査結果によっては、「築年数が古い」 「構造上、設置が難しい」 「屋根の面積が狭い」 「屋根上に室外機がある」などの理由で設置できない場合があります。
また、屋根の形状や方角によって設置方法が異なるため、事前に建物や屋根の状況を確認することが重要です。特に、1981年改正の新耐震基準を満たしていることや、必要に応じた耐震補強の実施が求められます。
◇電力の使用状況
発電した電力を無駄にしないためには、現在の電力使用状況を詳しく把握し、発電量を自社内で余すことなく消費できるかどうかが重要です。これにより、どの程度のコスト削減が可能か、最大デマンドをどれだけ減らせるかを把握でき、最適な設計の参考になります。
特に、電力を多く使用する時間帯や施設の稼働状況を分析することで、発電効率を最大限に引き出せます。
◇スケジュール
導入までの期間は、業者や設置条件によって異なりますが、通常4〜13ヶ月程度かかるため、運転開始までのスケジュールを把握しておきましょう。
一般的な流れは、「現地調査」 「シミュレーションやプランの提案・見積り」の後、「事業計画」 「接続契約」 「補助金申請」 「事業計画認定の取得」 「工事請負契約」 「PPA契約」などの手続きです。電力会社の工事により13ヶ月以上かかる場合もあるため、事前にスケジュールの確認が大切です。
◇補助金の申請
国は再エネ導入を支援するために、さまざまな税制優遇や補助金を提供しています。これらを活用すれば、導入費用を削減でき、経済的なメリットを受けることが可能です。
また、中小企業向けには設備投資減税といった優遇措置も用意されています。さらに、各自治体も独自の助成金制度を設けているため、最新の補助金情報を確認し、積極的に活用することをお勧めします。
自家消費型太陽光発電は、発電した電力を自宅や企業内で使用し、売電せずに自家消費する方式です。2020年にFIT制度が改定され、50kW未満の設備は自家消費が前提となり、全量売電が不可となりました。この変更により、エネルギー自給自足を目指す動きが強まっています。
自家消費型太陽光発電は、CO2削減、電気代の節約、災害時の非常用電力確保の面で注目されています。化石燃料に比べてCO2排出が大幅に少なく、電気代の高騰を抑えることができるため、多くの企業が導入を進めています。また、停電時に電力を確保できる点も重要です。
しかし、導入には設置スペースの確保、初期費用やメンテナンス費用の負担、天候による発電量の変動といった課題があります。設置前には建物の適性、電力使用状況の確認、スケジュール調整、補助金制度の活用が必要です。これらの要素を事前に確認することで、効果的な導入と運用が可能となります。